IT-BCPとは、ITシステムのBCP(事業継続計画)のことを指します。インターネットの普及により、ITシステムを活用していない企業はほぼないと言って良いほど、日々の業務やサービス提供に活用されています。
自然災害やサイバー攻撃などの緊急事態に、被害を最小限に抑え事業を早期に復旧・継続していくためには、事前に対応策を決めておくことが重要です。
この記事では、IT-BCPが注目される背景や策定によるメリット、具体的な対策方法と成功させるためのポイントについて紹介します。
IT-BCPとは
IT-BCPとは、「Information Technology – Business Continuit Plan」の略で、BCP(事業継続計画)の中でもITシステムのBCP対策を指します。
災害やサイバー攻撃などの緊急事態が発生した場合に、ITシステムの運用を維持し事業を継続することを目的としています。
BCP対策を行うことで災害時や緊急事態時にも事業を継続するための基盤が整っていると判断され、社外からの信頼獲得にもつながります。
IT-BCP対策が注目されている背景
IT-BCP対策が注目されている背景として以下の3つのポイントを紹介します。
- ITシステム利用者の増加
- サイバー攻撃の増加
- 自然災害の増加
ITシステム利用者の増加
インターネットの普及により、ITシステムを使ったサービスの利用者が増加しています。
ITシステムを使用したサービスを提供する企業や利用者が増加している中で、緊急事態によるサービス停止が起こると、企業の事業運営に大きな影響を及ぼします。
また、日常的にサービスを利用しているユーザーにとっても大きな不便をもたらします。
緊急時にサービスの停止が起きても早期復旧させ、影響を最小限に抑えるためにもIT-BCPの重要性が高まっています。
サイバー攻撃の増加
IT技術の発達とともにサイバー攻撃の手口も段々巧妙化しています。
サイバー攻撃の手法や対策を知っておかなければ、攻撃を受けた際に甚大な被害が出る可能性があります。攻撃のリスクは誰にでもあるため、攻撃を受けた際の対策を事前にしておくことが重要です。
自然災害の増加
日本は地震などの自然災害が多いため、自然災害によるITシステムへの被害の対策を考える必要があります。地震や水害などによりサーバーの停止などの被害が発生する可能性があります。
2011年の東日本大震災の際には、甚大な被害を受けた企業が多くありました。いつ起こるかわからない自然災害に備え、データを守るための対策を進める必要があります。
IT-BCP策定のメリット
IT-BCPを策定することによるメリットについて以下の3つを紹介します。
- 被害を最小限に抑え、事業を早期復旧できる
- 中核事業の可視化につながる
- 株主・取引先からの信頼につながる
被害を最小限に抑え、事業を早期復旧できる
IT-BCPの策定により、企業はサイバー攻撃や自然災害などの災害や緊急事態に備えた対応策を持つことができます。これにより、システムやデータの損失を最小限に抑え、事業の中断を防ぐことができます。
適切な復旧プロセスの策定やバックアップシステムの導入により、システムやサービスを迅速に復旧させることができます。
中核事業の可視化につながる
IT-BCPを策定することにより、企業の中核事業や重要なプロセスを明確にすることができます。事業継続計画の作成過程で、緊急事態時に優先して復旧すべき業務を可視化する必要があるため、どの部門やプロセスが事業の中核を担っているかを特定できます。
一方で、IT-BCPは、BCPとの整合性の維持が求められます。ITシステムごとに考慮すべき可用性要件がそれぞれ異なるため、個別最適になりがちですが、ITシステムだけが早期復旧しても事業継続にはつながらないため、企業全体で可用性を確保することが重要となります。
株主・取引先からの信頼につながる
適切なIT-BCPを持つ企業は、株主や取引先から信頼を得ることができます。
災害や緊急事態に対する準備が整っている企業は、リスク管理能力が高いと見なされ、株主や取引先との信頼を築くことができます。また、事業を継続するための対策があることで緊急事態の際に取引先への影響を最小限に抑えることができ、安心感を与えます。
IT-BCPの具体的な対策方法
IT-BCPの具体的な対策方法として以下の5つを紹介します。
- データのバックアップ
- システムの冗長化
- 社内でCSIRT(シーサイト)の設置
- 緊急時の連絡体制の構築
- リモートワークの推進
データのバックアップ
データのバックアップは、IT-BCPの中でも中核的な対策の一つです。
多くの情報をデータとして管理する企業では、データが失われると大きな損害が出てしまいます。定期的かつ適切なバックアップを行うことで、重要なデータが失われた場合でも復元することが可能です。
バックアップは複数の場所に保存することで、地震や水害など地域が限定される災害の場合にも被害を最小限にできる可能性が高まります。
システムの冗長化
システムの冗長化は、システムに問題が発生した場合の対処策として、サーバーやネットワーク機器の予備を準備しておくことを指します。災害が発生しシステムが利用できなくなった場合、予備のシステムに切り替えることで、業務を継続することが可能になります。
社内でCSIRT(シーサイト)の設置
CSIRT(Computer Security Incident Response Team)とは、セキュリティインシデントに対処するための専門チームです。
インシデントの原因を究明し、事業の早期復旧や継続、二次被害の防止など幅広い対応を実施します。
CSIRTを社内に設置し、平時から非常事態の発生を想定しておくことによって、災害やセキュリティ事故が発生した際でもスムーズな対応ができるようになります。
緊急時の連絡体制の構築
緊急時の際には、スムーズに連絡がつかない可能性があるため、あらかじめ連絡体制におけるルールを作成しておくことが重要です。
事前に定められた連絡先や手順を明確にし、責任者や担当者が迅速に情報を共有できるよう、緊急時の連絡体制として、指揮系統・連絡手段・連絡ルールの策定、緊急時一斉メールや安否確認システムの導入の検討を進める必要があります。
リモートワークの推進
リモートワークの推進は、災害や緊急事態が発生した際に、従業員が業務を継続できるようにするための対策です。
リモートワークの導入により、従業員は災害が発生した場合でも、自宅や遠隔地から業務を行うことができます。社員が自宅のPCから社内ネットワークにアクセスできるようなシステムの導入が必要になります。
IT-BCP策定を進める際のポイント
IT-BCP策定を進めるにあたり重要なポイントとして以下の3つを紹介します。
- ガイドラインを参照する
- BCPとの整合性を保つ
- 従業員への浸透・訓練の実施
ガイドラインを参照する
経済産業省や内閣府防災担当、サイバーセキュリティ本部など、国の各機関がIT-BCPに関するガイドラインを発行しています。
一般企業を対象に、緊急時の対応手順や実施計画、教育、訓練の必要性などが記載されており、BCP策定時の参考資料として活用できるため、作成の際には参考にすると良いでしょう。
具体的には、以下のようなガイドラインが存在します。
BCPとの整合性を保つ
IT-BCPは、企業の事業継続計画(BCP)の一部であるため、BCPとの一貫性を維持することが鍵となります。
BCPの目的は、非常事態の被害を最小限に抑え、事業の継続を確保することであるため、ITシステムのみを復旧しても事業継続には役立ちません。IT-BCPをBCPと密接に結びつけ、企業全体のBCPとの調和を確認することが必要です。
従業員への浸透・訓練の実施
IT-BCPを策定するだけでなく、従業員への浸透や訓練の実施も重要なポイントです。従業員がIT-BCPの内容や手順を理解し、緊急時に適切に対応できるようにするためには、定期的な教育や訓練が必要です。
また、緊急時の対応における役割や責任を明確にすることも重要です。従業員が適切に訓練されていることで、事態が発生した際に円滑な対応が可能となり、事業の中断を最小限に抑えることができます。
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BCP対策は、企業を自然災害や人的災害のリスクから守り、該当時には被害を最小限に抑え早急に復旧するために必要とされています。特にインターネットが普及しITシステムが必要不可欠となった現在では、ITに特化したIT-BCPの策定が重要です。
システムが災害やサイバー攻撃などの緊急事態に機能しなくなると事業を継続することが困難になります。事前の対策として、データのバックアップやシステムの冗長化を進め、社内の体制を整えておくことで緊急時に冷静に対応することができます。
IT-BCPの策定には、システムを守る項目を盛り込みつつ、企業全体のBCPとの整合性を保つ必要性があります。
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