「共創」とは、多様な立場の人たちと対話しながら、新しい価値を「共」に「創」り上げていくことを意味します。
ビジネス環境が目まぐるしく変化し、自社単独で競争優位性を確保するのが困難になりつつある近年、共創によって新たな価値を生み出そうとする企業が増えています。新たなファンの獲得や自社の競争優位性の獲得につながる可能性があることからもビジネスにおいて「共創」は重要な手法の一つとなるでしょう。
この記事では、共創ビジネスの概要とメリット・デメリット、種類、実践に向けて必要なことについて紹介します。
共創ビジネスとは
共創ビジネスとは、顧客満足度の視点からビジネスの新たな価値を創造するビジネスモデルのことを指します。製品やビジネスモデル、戦略を、消費者やパートナー企業、外部の専門家、ステークホルダーと共に創造します。
これまでの商品・サービス開発の多くは、顧客の要件を整理し、企業側の開発計画に沿って提供する「プロダクトアウト」型が多かったですが、お客様視点での開発によりお客様が真に求める製品を開発することが求められており、共創ビジネスが注目されています。
共創を実現することによって、社外の人からの意見から新しいアイデアやヒントを収集し、製品やサービスの開発に取り入れることが可能になります。これにより、顧客満足度が向上し、さらにはビジネスの成長に貢献することが期待されます。
共創の考え方をビジネスに取り入れる
近年、「共創」という言葉が注目を集めている背景として、ビジネススピードが加速し、その変化に即座に対応できるかどうかが企業の生き残りを左右する時代になった、という意識が高まったことが挙げられます。
これまでの長い歴史の中で苦労して築き上げた競争優位であっても、急激なビジネス環境の変化により、競合優位性を長期的に維持することができなくなりました。このことから、より顧客中心の価値を想像することの重要性が認識され、「共創」のビジネスモデルへシフトすることが求められています。
このようなビジネスモデルの転換のためには、各社が自社の強みやリソースを把握し、どの分野で競争できるのかを再考することが必要です。
共創ビジネスのメリット
共創ビジネスのメリットとして以下の4つを紹介します。
- 消費者視点の商品開発をすることができる
- 中長期的なファンを増やせる
- 商品開発の可能性が広がる
- 足りないリソースを補完できる
- シナジー効果を獲得できる
消費者視点の商品開発をすることができる
共創では、企業同士の取り組みの場合もありますし、企業と消費者で行う取り組みもあります。消費者と共創を行う場合には消費者の声を直接聞くことができるため、消費者目線のニーズやアイディアを活かした商品開発が可能になるというメリットがあります。
消費者の生の声を聞き、ビジネスとしてそれらを取り入れながら実現するにはどうしたらよいかという実現可能性を考えながら消費者と「共に創る」ことが大切です。
中長期的なファンを増やせる
消費者と共に商品開発を行うことで、消費者も企業に対して親近感を持つことができます。自分の意見やアイディアを商品開発に生かしてもらえるという関与性もありつつ、普段使用している商品を提供している企業の方と直接話せることでより親近感を持ってもらえる可能性があります。
各ブランドを推しているロイヤルカスタマーなどとコミュニケーションを取ることでより支持を集めることができます。
共創ビジネスのマーケティングに主体的に参加した消費者は、商品・サービス・企業の長期的なファンになってくれる可能性があります。
商品開発の可能性が広がる
消費者や外部の組織と連携して商品開発を行うことで、これまでの自社内部のみの視点では得られなかった新たな視点やアイディアを生み出すことができます。
新たな視点が加わることで商品開発の可能性が広がるでしょう。
足りないリソースを補完できる
共創によりお互いが自社の強みを活かすことで、自社だけでは補うことのできないリソースを提供し合うことができます。これにより、資金や技術、人材などの足りないリソースを補うことができ、新たな事業の実現性が高まります。
シナジー効果を獲得できる
共創を行い、パートナー企業と連携することにより、様々なシナジー効果が得られます。例えば、複数の企業が一括で仕入れを行うことによりコスト削減につながる生産シナジーや、連携先の企業が持つ販売網、流通経路を活かして販売力を高める販売シナジーなどが挙げられます。
共創ビジネスのデメリット
共創ビジネスのデメリットとして以下の4つを紹介します。
- 自社の企画力が低下する可能性がある
- 情報漏洩のリスクがある
- ルールの管理が煩雑になる
- 自社都合での解消が難しい
自社の企画力が低下する可能性がある
共創ビジネスにおいては、共創パートナーの企業や消費者から斬新なアイデアをもらい商品やサービスを開発することが可能になるため、顧客視点での新たな事業を創出するためには非常に重要な取り組みです。
しかし、1回のみではなく複数回共創ビジネスを実施し、この状態が長く続くと、自社内で新たな製品やサービスを開発するためのアイディアが生み出せなくなってしまう可能性があります。
共創に取り組みながら、関係者の教育を含めて様々なアイディア出しの方法やリソースの活用方法を学び、自社内でも新たな視点で企画を進めていけるような体制づくりが必要です。
情報漏洩のリスクがある
共創では自社のノウハウや技術を公開し、お互いが持つ情報や技術を生かしながらプロジェクトを推進していくため、共創相手に自社の重要な情報が漏洩するリスクがあります。
あらかじめNDA(秘密保持契約)を結んでおくなどの対策が必要になります。
ルールの管理が煩雑になる
共創を進めていく上では両者の様々な権利の問題が絡みます。共創を実施する前に想定される事柄に関してはルールを決めておかなければ後々大きな問題に発展する可能性があるでしょう。
また、消費者と共創を行った場合は、自分のアイディアが商品開発に盗用されたと認識されてしまう可能性が全くないとは限りません。トラブルを起こさないためにも事前説明などの準備、ルールの周知が重要になります。
自社都合での解消が難しい
共創を進めていく中で、当初想定したものと違った、思ったより自社にメリットがなかったということがあっても多くのステークホルダーを巻き込んで進めていくプロジェクトにおいては自社の都合のみで関係を解消することが難しい場合があります。
共創を始める前に、パートナー企業の調査や競争による効果とリスク、解消における取り決めなどを進めておく必要があります。
共創ビジネスの種類
共創には以下の3つの種類があります。それぞれについて紹介します。
- 共有タイプ
- 提携タイプ
- 双方向タイプ
共有タイプ
共有タイプは企業や自治体、研究機関などがコミュニティやコンソーシアムのようにオープンな関係を構築し一つの課題やテーマについて議論を重ね、アイデアを出し合う取り組みのことを指します。
異なるバックグラウンドや知識、リソースを持つ他の組織のメンバーと話し合うことにより、同じ課題やテーマでの議論でも異なるソリューションやこれまでにないアイディアが生まれる可能性があります。
共有タイプの共創では、特定の人のみが発言をしたり議論によって生まれた利益を誰かが独占したりするのではなく、それぞれの参加者がリーダーシップを発揮し、それぞれの役割を果たすことが重要になります。
提携タイプ
提携タイプは、プロジェクトを実行する上で自社に足りないアイデアや技術・人材などを他社の協力によって補い、解決する取り組みのことを指します。
これまでの事業においても、自社に足りないリソースを補うことは可能でしたが、従来の発注者と受注者という関係ではなく、対等な事業パートナーとして連携し、お互いがお互いのために意見を出し合うことで協業する関係のことを指します。
双方向タイプ
双方向タイプとは、企業が商品やサービスを開発し販売するという一方的なコミュニケーションではなく、企業と顧客が対等な関係で議論を行い、課題解決に取り組むことで新たな価値を生み出す取り組みのことを指します。
顧客から自社の商品やサービスに対して直接フィードバックをもらえる機会はとても貴重であり、これまでにないアイディアや解決策が生まれる可能性があります。
近年では、SNSなどのインターネットの普及により、顧客と企業が直接コミュニケーションを取ることが容易になったため、双方向の関係をベースとした競争が生まれやすくなっています。
共創ビジネスの実践に必要なこと
共創の実践には以下の3つの要素を共有することが必要だと言われています。それぞれについて紹介します。
- 価値の共有
- 体験の共有
- 技術の共有
価値の共有
価値の共有とは、社会のどんな課題を解決したいのか、ユーザーのどんなニーズに応えたいのかなどといった、共創を実践するためのそもそもの目的となる部分を互いに擦り合わせることを指します。
そもそもの共創の目的が互いに一致していなければ、プロジェクトを成功させることが難しくなります。互いに同じ目標・目的に向かって自社の強みやリソースを出し合うことが成功につながります。
互いに目標を確認し合い、納得した上で推進していくことが重要になります。
体験の共有
共創を進めていく中で、パートナーの事業や技術や強みなどを実際に体験することで、相手への理解と信頼感を深めることが大切です。
プロジェクトの立ち上げからアイデア出し、開発、ビジネスモデル構築、事業化準備など、共創の推進には様々な場面で壁にぶつかることも多くなります。事業化までの過程をパートナーと共有することで団結力が高まり、同じ目標に向かって進みやすくなります。
また、多くの体験を共有することで、互いの強み弱みを知ることができるため、進行中のプロジェクトに活かせるだけではなく、新たな共創プロジェクトのきっかけになる可能性もあります。
技術の共有
共創の大きな目的の一つに自社のリソースや技術では実現することのできないプロジェクトの不足部分を共創パートナーに補ってもらうことが挙げられます。
共創パートナーから自社にない技術を提供してもらい、一方でパートナーには自社の技術を提供することで、一から自社で技術を構築するよりもコストを抑えつつ、スピード感を持ってに業界の中で技術を補完しながらプロジェクトを進めていくことができます。
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共創は、企業が様々なステークホルダーと協業し、新しい視点やアイディア、技術を取り入れることにより新たなイノベーションを創出する際に有効な手段です。
これまでのプロダクトアウト型での商品・サービス開発では競争優位性を維持するのが難しくなっている現代において、外部組織や消費者の声を取り入れながら顧客視点での商品開発をすることができる「共創」は今後より重要になってくるでしょう。
共創を行うためには、自社の強みを活かし、プロジェクトの目標に賛同してくれる共創パートナーや消費者を見つけることが重要ですが、自社のみで相手を探すのは大変です。事前の準備や相手へのコンタクトなどパートナーとなるまでには様々なプロセスを踏んでいく必要があります。
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