共創マーケティングとは、企業が外部の組織や消費者と協力して新たな価値を生み出すためのマーケティング手法を指します。
従来のマーケティング手法では、消費者のニーズを汲み取るためにアンケートや調査を実施し商品開発に活かすということが一般的でした。しかし、消費者のニーズが多様化した現代では、消費者のニーズを正確に読み取るのが困難になっています。
共創マーケティングにより消費者と直接コミュニケーションをとり、これまでになかった視点でのアイディアを取り入れることで消費者視点での商品開発を行うことが期待されます。
この記事では、共創マーケティングの概要と求められる背景や目的、メリット、企業の取り組み事例について紹介します。
共創マーケティングとは
共創マーケティングとは、「社外」の企業や消費者などのパートナーと一緒になって製品開発を行うことを指します。
消費者がパートナーとなる共創では、売り手(企業)と買い手(消費者)が対立的な立場ではなく協力的な立場で開発を進めるため、商品開発の最初の段階から消費者ニーズを取り込むことができます。
また、他社や官公庁など他組織と共創する場合には、自社だけのリソースや技術、アイディアや視点ではできないことを実現できる可能性があります。
共創マーケティングが求められる背景と目的
共創マーケティングが求められる背景として、従来型マーケティングの限界が挙げられます。
マーケティングでは消費者のニーズを知ることが重要ですが、アンケートや調査などの従来型の手法で正確に消費者のニーズを把握するのは困難です。
顧客のニーズを正確に把握し製品開発に活かすためにも、直接的なコミュニケーションによって本当の価値観やニーズを明らかにすることが求められています。
また、SNSの普及により企業の商品やサービスはSNSを通じて拡散されるようになりました。SNSマーケティングに注力する企業も多いですが、広く万人を相手にしたコミュニケーション施策になるため、ロイヤルカスタマーなどブランドを推してくれている顧客に対して効率的にアプローチし、中長期的なファンを増やす意味でも共創マーケティングが注目されている。
共創マーケティングのメリット
共創マーケティングのメリットには以下の4つのメリットがあります。
- 消費者ニーズを的確に把握できる
- 商品開発の可能性が広がる
- 長期的なファンを増やせる
- サービス提供後もフィードバックを得られる
消費者ニーズを的確に把握できる
これまでのマーケティング手法を採用したサービス開発では、調査データをもとにターゲット分析、仮説立てを行うことが一般的です。しかし、アンケート調査などを通して収集した消費者の意見から正確にニーズを掴むことが難しくなってきています。
一方、共創マーケティングでは消費者の声を直接聞くことができるため、消費者目線のニーズを的確に掴んだ商品開発が可能になります。
内部では得られないようなアイデアが生まれる可能性がある
消費者や外部の組織と連携して商品開発を行うことで、これまでの自社内部のみの視点では得られなかった新たな視点やアイディアを生み出すことができます。直接消費者の声を聞くことができる貴重な機会になります。
新たな視点が加わることで商品開発の可能性が広がるでしょう。
長期的なファンを増やせる
消費者と共に商品開発を行うことで、消費者も企業に対して親近感を持つことができます。普段使用している商品を提供している企業の方と直接話せることでより興味や愛着を持ってもらえる可能性があります。
各ブランドを推しているロイヤルカスタマーなどとコミュニケーションを取ることでより支持を集めることができます。そのため、共創ビジネスのマーケティングに主体的に参加した消費者は、商品・サービス・企業の長期的なファンになってくれる可能性があります。
サービス提供後もフィードバックを得られる
サービスローンチ後もユーザーからフィードバックを得ることで更なる改善、成長が見込めます。調査に参加してもらったユーザーに継続的に意見やフィードバックをもらう機会を設けることで、ニーズを反映した改善を行うことができ、顧客のエンゲージメントを高めることができます。
共創マーケティングのデメリット
共創マーケティングのデメリットには以下の2つがあります。
- 消費者にとって魅力的な企画を作る必要がある
- 消費者のニーズを商品開発に活かすスキルが必要
消費者にとって魅力的な企画を作る必要がある
共創マーケティングを実現するためには、消費者に参加してもらうことがまず第一歩となります。参加したいと思ってもらえるよう、消費者にとって魅力的かつ、実施により企業にとっても新たな発見やアイディアにつながるような企画を作る必要があります。
調査を実施する際のアンケート項目などは、どんな消費者の意見があれば有効的に商品開発に活かせるのかを事前に考え準備しておく必要があります。
消費者のニーズを商品開発に活かすスキルが必要
無事消費者に参加してもらうことができ、意見やアイディアを集められたとしても、それを商品開発に活かせないと意味がありません。
収集した意見をどこまで汲み取り、商品開発に反映させながら、ビジネスとしても成立するポイントを探っていかなければなりません。
共創マーケティングの進め方
共創マーケティングの進め方として以下の4ステップを紹介します。
- ブランドの使命の再認識
- 誰と何を共創するか決定
- 共創の意義の定義
- 参加するメリットの明確化
ブランドの使命の再認識
まずは、共創マーケティングの目的が何か、顧客にとって価値のあるブランドとは何かをもう一度考え、再認識する必要があります。
共創マーケティングには社会の関係者や消費者の協力が必要不可欠です。多くの人からの協力を得るためには、納得感のある目的が必要になります。また、顧客にとってブランドがどんな役割を果たしているのか、何の役に合っているのかを再認識することで、参加者に共感してもらえる価値を見つけ出すことができます。
誰と何を共創するか決定
ブランドの価値や共創マーケティングの目的を定義したら、マーケティングプロセス全体を見直し、どこに共創可能性があるかを探ります。消費者が効果的に関わることができる部分を探すことが重要です。
また、「誰とやるか」に関しては、ターゲットを絞ることが重要になります。共創の目的に沿って、どんなユーザーであれば目的を果たせるのか、ターゲットを定義する必要があります。
共創の意義の定義
企業と参加者とで、共創の意義を定義します。上記二つのステップで検討した内容を踏まえて消費者にとっての共創コミュニティの価値を考えます。消費者にとって「参加したい」と思ってもらえるようなコミュニティの価値としてどのような内容を打ち出すのかが重要です。
参加するメリットの明確化
最後に参加者にとって参加する価値があるものになっているか確認して、参加メリットを明確化しましょう。例えば、「商品の改善に役立てる意見を集める」という目的で共創コミュニティを作るのであれば、参加することで商品のサンプルがもらえるなど参加の動機づけが必要です。
共創コミュニティの価値を参加者目線で再度見直し、期待感や好奇心を持てる内容になっているかを確認しましょう。
共創マーケティングの事例
共創マーケティングの事例として、以下の5つを紹介します。
- ネスカフェアンバサダー:ネスレ日本
- くらしの良品研究所:無印良品
- ゼクシィ花嫁カフェ:リクルート
- AJINOMOTO PARK:味の素
- 百人ビール・ラボ:サッポロビール
ネスカフェアンバサダー:ネスレ日本
ネスレが提供しているコーヒーマシンを生活者に普及してもらう共創事例です。
ネスレはコーヒーマシンを職場に無償提供し、マシンの社内普及を生活者(消費者)に行ってもらう「ネスカフェアンバサダー」というサービスを展開しています。
アンバサダーに登録することで、無料でコーヒーマシンが職場に届きます。アンバサダーは職場でコーヒーを楽しんでいる様子のSNSへの投稿やアンケートへの協力が求められます。
参考:オフィスコーヒーなら ネスカフェ アンバサダー | 【公式】 ネスレ通販オンラインショップ
くらしの良品研究所:無印良品
無印良品が展開する「Muji.net」という共創プラットフォームです。(※1)
Muji.netの会員になった生活者がウェブサイト上で発表される「製品開発プロジェクト」を一緒になって考えるというもので、企業側からのプロジェクト立ち上げもあれば、消費者側からのプロジェクト立ち上げもあります。
アイデアや要望を出し、最終的には製品化します。発売後もその使用実感や改善点などをフィードバックし、さらによい製品に仕上げ続けていくことができるため、企業側は消費者の声を活かした商品開発ができ、継続的に改善することができます。消費者も参加することで自分のアイディアや意見が商品開発に生かされていく過程を体験することができます。
※1:2022年1月で終了
ゼクシィ花嫁カフェ:リクルート
花嫁カフェ(花カフェ)とはゼクシィが運営する公式SNSで、結婚準備中の花嫁が結婚準備に必要な情報を交換することができます。
ユーザーが書いた結婚までの日記を記事にしたり、ユーザー同士の情報交換の場として機能しています。悩み相談場やオリジナルグッズプレゼントなども展開しています。花嫁が体験した結婚式準備に関する情報を提供し合うことでユーザーは悩み解決や情報収集ができ、企業側はプレゼントなどを用意することで消費者の参加意欲を高める工夫をしています。
AJINOMOTO PARK:味の素
AJINOMOTO PARKは味の素が運営するレシピサイトで、「毎日の「おいしい」が見つかる」をキャッチコピーに、身近にある調味料を活用したレシピでおいしい食卓づくりをサポートすることを目的に運営されています。レシピ大百科、テーマ別健康と食情報、メルマガ配信、キャンペーンなどが展開されており、コミュニティに消費者が参加することができるイベントも不定期で開催されています。
百人ビール・ラボ:サッポロビール
「百人ビール・ラボ」は、サッポロビールとビール愛好家がSNSで意見を出し合いながら新しいビールを開発するプロジェクトです。2012年にスタートし、2017年10月時点では1,600人を超えるビール愛好家が参加しています。
「百人ビール・ラボ」では、コミュニティを1つの企業と見立て、「商品企画部」「商品開発部」「研究開発部」「広告宣伝部」「営業本部」の5つの部署に分かれて、百人ビール・ラボ社Online上でのディスカッションや、ビールの原料を勉強できるツアーなどを経て、半年間かけてビールを開発します。すべてのプロセスをFacebook上に公開し、ユーザーからの意見を反映しています。
2012年に開催された第1期では、12,000名のビール愛好家と世界初のコラボビール「百人のキセキ」を開発しました。
参考:ユーザー参加型新ビール開発プロジェクト第5弾『百人ビール・ラボ社』活動スタート! | ニュースリリース | サッポロビール
共創マーケティングについて相談するならレスターマッチングサービスがおすすめ
共創マーケティングは企業が消費者視点で商品開発を行うことができる手法として近年注目を集めています。
消費者のニーズが多様化する現代では、従来のアンケート調査などによる消費者調査で正確なニーズを測るのが難しくなってきており、消費者から直接意見を聞ける共創マーケティングの重要度が高まっています。
共創マーケティングでは消費者に参加してもらうための目的やコンセプトの設定などが重要になってくるため、自社のみで進めていくには難しい場合もあるでしょう。
共創マーケティングを実施したいけれど進め方がわからない、他者事例も踏まえつつ検討したいなどの要望がある場合には、レスターマッチングサービスがおすすめです。
『レスターマッチングサービス』は、コンサルティング型のビジネスマッチングサービスで、担当者が企業の課題をヒアリングし最適な企業候補の選定から解決策の提案まで行います。
独自のネットワークに加え、他のビジネスマッチングサービスのデータベースや金融機関との連携により幅広い企業を紹介することが可能なため、共創マーケティングに知見のある企業探しをお手伝いすることが可能です。