日本の研究開発投資額は世界と比較すると低いですが、企業やスタートアップ、大学とのオープンイノベーションなどは推進されており、資金を持つ企業から大学やスタートアップへ研究開発費が投資されています。
この記事では、日本の研究開発投資の現状とオープンイノベーションの現状、オープンイノベーションにより研究投資開発を促進する取り組みを紹介します。
研究開発投資先を探している企業や、投資を受けたいと考えている企業・組織の方は是非ご覧ください。
日本の研究開発投資の現状
まず、世界と比較した日本の研究開発投資や日本国内の研究開発投資の現状を紹介します。
- 海外と比較すると日本の研究開発投資額は少ない
- 日本国内では大企業が大きなシェアを占める
- 大学は研究開発資金が足りていない
海外との比較すると日本の研究開発投資額は少ない
日本の研究開発費は2001年以降伸び悩んでおり、年々研究開発費の総額が増加しているアメリカや中国との差が拡大しています。
また、日本の主要企業の売上高に占める研究開発比率についても、2004年と2020年を比較するとほぼ横ばいとなっていることから、日本の研究開発投資額は世界と比較すると少ないことがわかります。
日本国内では大企業が大きなシェアを占める
日本の研究開発費のシェアを企業規模別に見ると、従業員500名以上の大企業が全体の研究開発費の9割近くを占めています。一方、従業員500名未満の企業は、5〜10%程度となっており、大企業が大きなシェアを占めていることがわかります。
2020年時点での日本のトップ10社の研究開発費をみると、トヨタ自動車や本田技研工業、ソニーグループや日産自動車など製造業が上位を占めています。
また、研究開発費と売上高には正の相関があることがわかっています。
大学は研究開発資金が足りていない
ここまで紹介してきたように日本の大企業は多くの研究開発費をもっていますが、これらの民間企業の研究開発資金は十分に大学に向かっているとは言えません。企業の研究費のうち、大学へ拠出している割合は2019年時点で0.49%にとどまっています。日本企業の大学への研究費の拠出額は、海外企業と比べると約200万円ほど差があり、日本の額が少なくなっています。
日本の大学における一件あたりの研究費を見ると、8割が300万円以下となっており十分な研究費を確保できているとは言えません。
また、大学研究者一人当たりの研究費はここ20年で伸びているもの、待遇に大きな変化はなく、日本の研究者の人材の流動性は高いとは言えないため、このままでは大学の研究者の数が減ってしまう可能性があります。
投資を加速させる日本のオープンイノベーションの現状
研究開発投資を加速させるためにも、企業や大学、投資家などが連携しながら相互に強みを出していくことが重要になります。ここでは、研究開発投資の状況として日本のオープンイノベーションの現状について紹介します。
- 企業と大学とのオープンイノベーションは進展している
- 企業スタートアップのオープンイノベーションは進展している
企業と大学とのオープンイノベーションは進展している
大学と企業の研究実績を見ると、2006年から2020年で共同研究の受け入れ額は約2.4倍、実施件数も約2倍に増加しています。
このことから、産学連携の事例としての共同研究が年々増えていることがわかります。
企業スタートアップのオープンイノベーションは進展している
事業会社とスタートアップの事業提携は増加しています。事業会社のスタートアップとの事業提携数が2014年では412件だったのに対し、2020年には1,909件となり約4倍に増加しています。
事業会社によっては、VCとの連携などによってCVCを設立したり、社内アクセラレータプログラムを活用し、スタートアップの探索・連携を行っており、社内からのスタートアップ創出に取り組む企業も出てきています。
大学と企業のオープンイノベーションの方法
企業と大学がオープンイノベーションを行う場合の方法として、主に以下の3つの方法があります。
- 大学と企業の共同研究
- 大学の教員や研究者による企業への技術・学術指導
- TLO(技術移転機関)による技術移転
大学と企業の共同研究
一つ目の方法としては、大学と企業が共同で研究を行う連携方法が挙げられます。大学などの研究機関や研究者が企業と協力して共同の研究プロジェクトを行うことで、新たな知識や技術の創出や製品・サービスの開発、社会課題の解決が期待されます。
共同研究によって、企業は大学の研究力や技術力を活かすことができ、大学は市場のニーズや消費者の特性などの社会課題や技術を活かせる市場の現状を知ることができるという双方にとってもメリットもあります。
大学の教員や研究者による企業への技術・学術指導
大学の教員や研究者が企業に対して技術的な指導や学術的な指導を行う方法も産学連携の方法の1つです。
企業が抱える技術的な課題において、大学の研究者が技術指導や学術指導、コンサルティングを行います。これにより、企業は最新の研究成果や専門知識を活用し、事業に対してより効果的な技術を導入することができます。
日本ではこのような学術指導制度を多くの大学が設けており、企業は大学に指導料を支払うという仕組みになっています。
TLO(技術移転機関)による技術移転
TLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)とは、大学の技術や研究成果を権利化し、企業に提供する機関のことです。
TLOが大学の研究成果や技術を買い、特許を出願するなどしてその技術を権利化します。権利化した技術を企業に提供することでTLOは企業から権利使用料をもらい、大学はその一部をTLOから還元してもらいます。
これにより、企業は大学の研究成果を取り入れることができ、大学は研究成果を収益化することができます。
企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援する取り組み
企業がスタートアップとのオープンイノベーションを行うための支援策として実施されている取り組みを紹介します。
- オープンイノベーション促進税制
- スタートアップイベントの開催
オープンイノベーション促進税制
オープンイノベーション促進税制は、企業や企業の投資部門がスタートアップ企業などに投資をする際に所得控除を受けられる制度のことです。
国内の事業会社またはその国内CVCが、オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得すると、その株式の取得価額の25%を所得控除できるという制度です。
国によるスタートアップ支援が充実してきている中で、スタートアップの起業支援や既存企業の成長を支援する目的から、オープンイノベーション税制を設定することでスタートアップが出資を受けやすくし、大企業や中小企業などには新興企業との取り組みを経て更なる成長を促すための制度といえます。
出資企業側がオープンイノベーション促進税制を活用するメリットには以下の要素があります。
- 出資をしながら節税できる
- 中小企業でも出資しやすい
オープンイノベーション税制の大きな魅力は出資によって所得控除が受けられるという高い節税効果を得られる点です。出資することにより、スタートアップが成長した場合には投資によるリターンが受けられますし、制度により所得控除のメリットも同時に得られます。
また、大企業の場合は1億円以上の出資が出資要件となっていますが、中小企業の場合は1,000万円から出資することも可能なため中小企業でも出資しやすくなっています。スタートアップとの連携により、自社にはない技術やアイディアを取り入れることにより事業を成長させたりプロジェクトに関わるメンバーの人材育成に繋げたりすることが可能です。
スタートアップ側がオープンイノベーション促進税制を活用するメリットには、以下の要素があります。
- 出資を受けて成長できる
- M&Aによる出口戦略が容易になる
オープンイノベーション促税制により、出資企業側は所得控除を利用できるため出資しやすくなり、資金調達を受けやすくなります。
また、令和5年度の税制改正により、オープンイノベーション促進税制はM&Aにも適用されるようになりました。この改正により事業会社に大きな節税効果が生まれるため、スタートアップは出口戦略としてM&Aを実現しやすくなります。
スタートアップイベントの開催
スタートアップイベントとは、スタートアップが集まるイベントのことです。
スタートアップイベントの目的は、スタートアップ企業が参加し、自社のアイディアや事業について紹介することで投資家からの出資を検討したり、アイディアに対してフィードバックをもらうことです。
そのため、ビジネスパートナーを探している大企業などが評価者として参加している場合もあり、出資企業を探している場合は参加することで事業を実現する上で大きな手助けとなるパートナーを獲得できる可能性があります。
オープンイノベーションの相手や業務提携先を探している企業も評価者側として参加することで出資先と出会うきっかけになります。
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日本の研究開発投資額は世界と比較すると少ないものの、大学やスタートアップと研究開発や事業提携を行う国内の企業数は年々増加傾向にあります。
大学やスタートアップに向けて研究開発費を投資することで、企業は研究力を生かした製品やサービスの開発を行うことができ、また自社の研究力を伸ばすきっかけにもなります。
大学やスタートアップも出資してくれる企業を見つけることで、研究費用を増やすことができ、また研究成果が社会で活用されるきっかけにもなります。
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