インターネットの普及とともにオンライン上での商品の購入が可能になり、私たちの生活に欠かせなくなっている物流ですが、需要の増加とともに物流企業では物流コストの増加という課題も上がっています。
物流コストを効果的に削減するためには、物流コストの内訳を知り、自社の課題を洗い出すことが重要です。物流の業務フローにおいてどの部分にどの程度のコストがかかっており、どこを削減できそうなのかを明確にすることで課題解決を進めることができます。
この記事では、物流コストの内訳や売り上げにおけるコストの構成比、コストを削減するための5つの方法を紹介します。
物流コストとは
物流コストとは、物流業務全体で発生する費用の総称です。物流コストは様々な要素から構成されています。企業が生産活動を行い、顧客に商品やサービスを提供するまでの運送、保管、加工、在庫管理、情報処理などの活動で発生する費用で構成されています。
物流コストの内訳について以下で詳しく紹介します。
物流コストの内訳
物流コストは支払形態別・領域別(物流プロセス別)・機能別の3種類で大別されるのが特徴です。それぞれについて以下で紹介します。
- 支払い形態別
- 物流プロセス別
- 物流機能別
支払い形態別
支払い形態別コストとは、費用の支払い先で分類した物流コストです。
- 支払い物流コスト:外注先・取引先に支払うコスト
- 社内物流コスト:自社内で発生したコスト
支払い物流コストには、倉庫の賃貸料や業務委託した際の委託コストなどが含まれます。
社内物流コストには、社内システムの構築・運用費や人件費などが挙げられます。
日本ロジスティクスシステム協会の「2020年度物流コスト調査」によると、全業種における物流コストの支払形態別構成比は、支払物流費が 86.4%で、自家物流費が 13.6%となっています。
参考:
公益財団法人「日本ロジスティクスシステム協会」:『2020 年度 物流コスト調査報告書【概要版】』
物流プロセス別
物流プロセス別のコストは、製品の製造から販売までのプロセスごとに分類したコストの考え方です。
- 調達物流費:製品の製造に必要な原材料の調達にかかるコスト
- 社内物流費:社内業務にかかるコスト
- 販売物流費:商品・サービスの販売にかかるコスト
物流機能別
物流機能別のコストは、物流を機能別に分類した際に発生するコストの考え方です。
物流のプロセスには6大機能と呼ばれる工程があります。6大機能とは「輸送」「荷役」「保管」「包装」「流通加工」「情報処理」の6つです。これらの6大機能を踏まえたうえで、物流コストを4種類に分けて解説します。
【輸送・運送費】
商品を運ぶときに発生する費用。宅配業者、航空便、貨物船、チャーター機など様々な輸送方法があるがそれぞれに費用がかかる。
【荷役費】
荷物や商品の入出荷に伴う作業の費用。入庫費、出庫費、梱包費、流通加工費などが含まれる。
【保管費】
商品を倉庫に保管する際にかかる費用。倉庫の賃借料や荷物の保管料などが該当する。
【物流管理費】
物流管理で発生するバックオフィス側の人件費や管理にかかる費用。システムの導入にかかる費用なども物流管理費に含まれる。
【包装費】
商品や荷物を梱包するためのダンボールやテープ、緩衝材などの費用。
売上高における物流コスト比率とは
売上高物流コスト比率とは、企業の売上高に対する物流コストの割合を示した数値です。
日本ロジスティクスシステム協会の「2020年度物流コスト調査」によると、売上高物流コスト比率は、全業種平均で5.38%であり、前年より0.47%増加しています。
また、物流コストの中で物流機能別にコストの構成比を見ると、輸送費が 55.2%、保管費が 15.7%、その他(包装費、荷役費、物流管理費)が 29.1%となっている。さらに業種に分けてみると、輸送費の割合は、 製造業では 58.5%、卸売業では 43.6%、小売業では 45.0%となっており、全業種において最も大きな割合を占めるのが輸送費であるということがわかります。
参考:公益財団法人「日本ロジスティクスシステム協会」:『2020 年度 物流コスト調査報告書【概要版】』
物流コスト削減のための7つの方法
物流コストを削減するための7つの方法として以下を紹介します。
- 物流システムの導入
- 物流拠点の集約
- 倉庫内の作業ルールの策定
- 物流業務のアウトソーシング
- 在庫管理を最適化する
- サプライヤーに価格交渉をする
- 人件費を見直す
物流システムの導入
物流システムとは物流における基本的な活動を効率化・最適化するシステムのことです。
物流システムには主に以下の4つの種類があります。
- WMS(倉庫管理システム)
- TMS(輸配送管理システム)
- ピッキングシステム
- EDI
入荷管理、在庫管理、棚卸、出荷管理などの倉庫内で発生する業務の情報を一元管理することができる倉庫管理システムや、配車管理、進捗管理、実績管理など、商品を発送してからの輸送段階の情報を一元管理できる輸配送管理システム、倉庫内のピッキング作業を効率化することができるピッキングシステム、インターネット上で契約書や発注書、納品書、請求書などのさまざまなデータをやりとりすることができるEDIなどを導入することにより、輸送や保管、荷役、包装、流通加工などの物流工程の情報を一元管理することができます。そのため、業務の効率化を図ることができます。
物流システムの導入により、これまで人が行っていた業務を機械に代替させることが可能になるため、人的コストの削減や人為的ミスの削減にもつながります。
物流拠点の集約
全国に配置した拠点を集約することで、倉庫の賃貸料や保管費、諸経費などを削減できます。
現状、多くの物流企業では、物流拠点となる倉庫や工場が各地に分散しているため、各拠点間の輸送が必要となり業務の無駄が発生しています。この課題を解決するための対策として国土交通省は、拠点間の輸送を最低限にし、輸送効率を向上させるための各設備を集約した輸送連携型倉庫の設立を推奨しています。
輸送連携型倉庫を設立し輸送網を1箇所に集約することで、運送コストを削減し、各ドライバーのタスクの軽減や配達スピードの向上に繋げられると考えられます。
転配送の共同化
企業間による輸配送の共同化も物流コスト削減の方法の一つです。
これまでの各企業が個別に荷物を配送する方法では、トラックの積荷に空きがある状態での配送が行われ、燃料費や人件費に無駄が発生していました。また、各社が同じ配送先に荷物を運ぶ場合でもそれぞれの企業がトラックを用意し別々に運ぶことが一般的です。
複数の物流企業が連携し、各企業が輸配送を担当することになっている商品を1台のトラックに積み込んで配送することができれば、積載量を最大化しドライバーのリソースも共同管理することができるため、配送コストを削減し無駄のない効率的な配送が可能になります。
倉庫内の作業ルールの策定
倉庫内作業ルールを策定することで無駄な業務の発見・削減につながることがあります。作業ルールの策定には、5S活動がおすすめです。5S活動とは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」からなる、製造業における工場などの職場環境の改善要素です。
【5S活動】
- 整理:必要なものとそうでないものを区別する
- 整頓:必要なものを必要な時に取り出せるようにする
- 清掃:職場からゴミや汚れを排除する
- 清潔:上の3つを行い清潔な状態を保つ
- しつけ:従業員に対し上の4つのことを実践させる
物流業務のアウトソーシング
物流アウトソーシングとは、自社の物流業務を外部の専門業者に委託することを指します。
自社物流の場合、人材確保や自社倉庫、配送のためのトラックや出入庫管理などを手配、管理する必要があります。
外注することで、外部の専門的で高水準な物流サービスを提供することができるようになり、倉庫の賃料や人件費の削減にもつながります。
在庫管理を最適化する
在庫管理を最適化することにより、保管費用を削減できます。
在庫管理ツールを導入し、在庫データを収集・分析することで、適正な在庫数を把握し過剰な倉庫を減らすことができます。
サプライヤーに価格交渉をする
倉庫を借りている場合はサプライヤーと価格交渉を行うこともコスト削減の方法の一つです。物流コストの内訳を見ても外注先に支払うコストが多くの割合を占めていることから、価格を少しでも下げることができれば年間で大きな額となります。
倉庫を貸し出している業者や物流業務に関係のある取引先と価格交渉の余地がないか検討してみましょう。
人件費を見直す
人件費を見直すこともコスト削減の方法の一つです。
物流業界は、深刻な人手不足の課題を抱えています。長時間労働や労働環境へのイメージの悪さなどから人手不足の状況が続いていますが、2024年問題にあるようにトラックドライバーの時間外労働時間が960時間に規制されることで一人当たりの労働時間が短くなることから、さらなる輸送能力不足が懸念されています。
人手不足の状況を乗り切るためには、限られた人材を適切に配置し、業務を効率化することで人件費を見直す必要があります。
物流システムやロボットを活用することで業務を自動化し、業務に必要な人数を抑えることができます。システムやロボットの導入により業務を自動化することができれば、他の人手が必要な業務に人材を充てることができます。
また、正社員の採用だけではなく、人材派遣などを活用し繁忙期など人手が必要になる時期に臨時で人を雇うなどすることで人件費の削減につながる可能性があります。
物流コスト削減について相談するならレスターマッチングサービスがおすすめ
物流業界は、深刻な人材不足や労働環境の悪化、配達スピードの向上など様々な問題を抱えており、配達需要が高まる現在では一刻も早く解決することが求められています。
課題の中の一つとして物流コストの上昇が挙げられます。2024年問題で企業の経営圧迫などが懸念されているため、物流コストを削減することは物流企業の経営課題とも言えるでしょう。
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