近年注目を集めているBCP対策ですが、BCPマニュアルの策定やマニュアルに即した設備投資には多額の資金が必要になります。
企業がより効果的なBCPマニュアルを策定し、実際に対策するためには自治体が提供している補助金・助成金をうまく活用していくことが重要になるでしょう。
本記事では、BCP対策に活用できる補助金・助成金について、対象事業者や対象経費も含めてご紹介します。
BCP対策とは
BCPとは、事業継続計画のことで、自然災害やテロなどの緊急事態が発生した際に、企業の事業への損害を最小限に抑え、早期復旧を目指す計画のことです。
企業は自然災害や人的災害、近年では新型コロナウイルス感染症など常に様々なリスクにさらされています。このような被害にあった際には、いち早く中核事業を復旧させ事業を継続していくことが求められます。
その際の対応や復旧手順をまとめたものが事業継続計画です。
BCP対策の重要性
BCP対策は、自然災害や人的災害などの有事に会社や従業員を守るために必要とされています。
地震や水害、火災といった自然災害や、サイバーテロ、感染症の拡大によるパンデミックなど、企業は多くのリスクにさらされています。
また、従業員による不祥事や情報の流出、システム障害などの人的ミスによるリスクも考えられます。
こうした非常事態が起こった際に企業を守るための体制づくりとしてBCP対策が注目されています。
日本では2011年の東日本大震災をきっかけに、自然災害で大きな被害を受けた際の経営や事業、人材に対する対策が不十分であるという認識が広がったことで注目され始めました。
企業の経営や事業の存続をおびやかす外的要因・内的要因が多いこの時代には、事業継続のためのマニュアルを策定し事前に十分な対策をとっておくことが非常に重要です。
BCP実践促進助成金とは
BCP実践促進助成金は、BCPの実践に必要な設備・物品等の導入に必要な経費を一部助成することによってBCP対策を支援する制度のことです。
対象者は東京都内の中小企業で、東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社が管轄しています。
助成額と助成率については以下の通りです。
中小企業等 | 小規模企業者 | |
助成率 | 助成対象経費の1/2以内 | 助成対象経費の2/3以内 |
助成額 | 10万円~1,500万円 | |
備考 | 助成率に関して、電力の確保に資する設備(自家発電装置、蓄電池等)の導入経費については5分の4以内助成額の上限1,500万円はクラウド化の助成額を含むクラウド化の助成上限額は450万円 |
※参考:東京都「BCP(事業継続計画)の促進に関する助成金募集のお知らせ」
※参考:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和4年度 BCP実践促進助成金 申請案内」
BCP実践促進助成金の対象事業者
BCP実践促進助成金の対象事業者は、以下のいずれかの要件を満たした中小企業者(小規模企業者)及び中小企業団体、個人事業主となります。
特定非営利活動法人、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、医療法人及び政治・経済団体は助成の対象ではないため注意しましょう。
まず、都内での事業継続に関する以下の要件を全て満たす必要があります。
- 東京都内に本店または支店がある
- 個人の場合、開業届を提出して東京都内で営業している
- 東京都内で1年以上事業を行なっている
また、BCPの認定に関する以下の項目のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 平成29年度以降に公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下:公社)総合支援課が実施する「BCP策定支援事業(BCP策定講座・BCP策定コンサルティング)」による支援を受け、受講内容を踏まえたBCP
- 中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受け、その内容に基づいて作成したBCP
- 平成28年度以前の東京都又は公社が実施したBCP策定支援事業等の活用により策定したBCP
※参考:令和 4 年度 中小企業における危機管理対策促進事業 BCP 実践促進助成金【募集要項】
BCP実践促進助成金の対象経費
策定されたBCPを実践するために必要な設備・物品の購入、設置に係る費用として認められているものには以下があります。
①緊急時用の自家発電装置、蓄電池
- 太陽光パネル・蓄電池については、可搬式で非常時に設置して使用するものである こと。
- 太陽光パネル・蓄電池・自家発電システムについては、平常時の売電・節電に使用するものでないこと。
②従業員等の安否確認を行うためのシステムの導入又はサブスクリプション契約によるサービスの利用
③データのバックアップ専用のサーバ(NAS)、クラウドサービスによるデータのバックアップ
④地震対策としての制震・免震ラックへの買い替え、飛散防止フィルム、転倒防止装置の設置等
⑤緊急時用の従業員用非常食(水・食料等)、簡易トイレ、毛布、小型の簡易浄水器等の備蓄品
⑥災害水害対策用物品設備(土嚢、止水板等)の購入(ハザードマップの提出が必要)、設置
⑦感染症を想定したもの(マスク、消毒液等)
※医療行為・検査薬・検査サービス等は助成対象外
⑧BCPの補完として実施する基幹システム(ERP、CRM、SFA 等の内、企業の業務遂行の基幹となるシステム)の防災力強化のためのクラウドサービスの導入(クラウド化)
※参考:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和4年度 BCP実践促進助成金 申請案内」
BCP実践促進助成金の申請の流れ
BCP実践促進助成金の申請から実際に助成金が支払われるまでの具体的な流れは以下のようになります。
- 講座の受講等
- 申請予約
- 申請
- 審査会
- 交付決定
- 事業実施
- 完了報告
- 完了検査
- 助成金額確定
- 助成金請求
- 助成金支払
BCP実践促進助成金を申請するためには、まずBCP策定講座の受講や東京都・公社が実施したBCP策定支援事業等を活用して作成したBCPが必要になってきます。
これらが完了し、申請対象の事業者としての要件を満たすと、実際に申請できるようになります。
令和5年度の具体的な申請スケジュール・日程についてはまだ発表されていませんが令和4年度の申請スケジュールは以下の通りでした。参考にしてみてください。
期 | 申請予約受付 | 申請予約期間 | 交付予定日 | 助成対象期間 |
6月募集 | 6/16~6/21 | 6/24~7/4 | 9月上旬 | 〜令和5年1月 |
10月募集 | 9/26~9/29 | 10/3~10/12 | 12月上旬 | 〜令和5年4月 |
1月募集 | 12/20~23 | 1/11~1/19 | 3月上旬 | 〜令和5年7月 |
※参考:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和4年度 BCP実践促進助成金 申請案内」
自治体のBCP対策融資・補助金の例
これまで、東京都で利用可能なBCPの助成金について紹介してきました。ここでは、各地方自治体で利用可能なBCP対策に関連した融資・補助金について紹介します。
- 神奈川県
- 愛知県豊橋市
- 静岡県
神奈川県:BCP策定支援融資
以下のいずれかの要件を満たす神奈川県内で事業を行う事業者が対象になります。
- 事業継続計画(BCP)の策定やBCPに基づく対策を行う中小企業者及び協同組合等
- 事業継続力強化に関する計画を作成し、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者及び協同組合等
- 連携事業継続力強化に関する計画を作成し、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者及び協同組合等
融資条件
融資の条件は以下になります。
※以下は2023年3月時点での情報
資金使途 | 運転資金・設備資金 |
融資限度額 | 8,000万円 |
融資利率 | 年1.6%以内(固定金利) |
融資期間 | 運転資金:10年以内設備資金:15年以内 |
返済方法 | 分割返済(1年以内の据え置き可) |
担保 | 必要に応じて |
保証人 | 原則として法人の代表者は連帯保証人 |
信用保証料率 | 0.45%から1.52% |
愛知県豊橋市:豊橋市企業BCP策定支援事業費等補助金
愛知県豊橋市では、市内の企業に対してBCP策定にかかる費用の一部を補助金として支給する制度があります。
詳細の要件は以下になります。
※以下は2023年3月時点での情報
対象事業者 | 市内に事業所を有する中小企業者または中小企業団体 |
対象経費 | BCPまたは事業継続力強化計画の策定または改訂に際して専門家の助言を受けるために、コンサルタント、アドバイザー等に対して支払った費用 |
助成額 | 対象経費の1/2 |
助成額上限 | 年間3万円 |
※参考:豊橋市公式ホームページ「豊橋市企業BCP策定支援事業費等補助金」
静岡県:県内立地工場等事業継続強化事業費補助金
静岡県では、静岡県第4次地震被害想定において被害が想定される区域にある工場が、他区域に移転するための用地取得費と新規雇用に対して、最大2億円を助成する制度を設けています。
詳細の要件は以下になります。
※以下は2023年3月時点での情報
対象施設 | 平成23年3月11日以前から県内で操業を行っている施設 |
用地取得面積 | 1,000平米以上 |
従業員数 | 1人以上 |
県内雇用 | 現状維持以上 |
研究施設面積 | 200平米以上 |
研究員数 | 1人以上 |
必須設置設備 | 流通加工用設備等 |
補助率・補助金額 | 用地取得費:20%新規雇用:50万円/人 |
限度額 | 2億円 |
※参考:静岡県公式ホームページ「県内立地工場等事業継続強化事業費補助金」
まとめ:BCP対策の補助金・助成金を申請するならレスターマッチングサービスがおすすめ
BCP対策は自然災害や人的災害などの有事の際、事業の中核事業や従業員を守り、いち早く復旧するために非常に重要です。日頃から対策を進め、有事の際に機能するよう準備しておく必要がありますが、BCPの策定や実際の対策には費用が掛かります。
各自治体が補助金・助成金を用意している場合もありますので、この記事を参考に自社に適用される補助金・助成金があるかどうかを確認してみてください。
BCP策定に関して手順や内容・規定がよくわからない、あるいは補助金・助成金の申請に自信がないという場合はレスターマッチングサービスがおすすめです。
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