IT技術が発展した現在、半導体はスマホやパソコン、電化製品や自動車、社会インフラなど私たちの生活のいたるところで使用されています。
しかし、2021年以降、半導体の不足についてニュースなどで目にする機会が多くなりました。国内でも自動車の減産が相次いだりしたことで影響を感じたのではないでしょうか。
一方で、2023年現在では、半導体不足は解消し、反対に供給量が多すぎる在庫超過になっているのではないかとも言われています。
この記事では、半導体不足から在庫超過になった背景と今後の予測についてまとめています。
半導体とは
金属などの良く電気を通す物体を「導体」、ゴムなどのほとんど電気を通さない物体を「絶縁体」といい、その2つの中間の性質をもつものを「半導体」といいます。導体と絶縁体の中間の性質を持っているため、電気を通す・通さないといった電流の流れをコントロールできます。
一般的に、半導体を材料としたトランジスタや集積回路などの電子部品も半導体と呼ばれることが多いです。
以下で半導体の種類について詳しく解説します。
半導体の種類
ここでは、半導体が使われる電子部品として代表的なものである、メモリ、ロジック
IC、センサ、トランジスタ、ダイオードについて紹介します。
メモリ
メモリとは、データを記憶しておく半導体を用いた部品のことです。
メモリにはRAMとROMの2種類があります。
RAMは読み書きの両方を行うことができ、コンピュータが処理を行うための一時的なデータを記憶します。ROMは書き込みのみを行うことができ、書き込まれたデータを長期的に記憶しておくことができます。
一般的にメモリとはRAMのメインメモリを指すことが多いです。
ロジックIC
ロジックとは、論理演算機能を持つ半導体です。
具体的には、コンピュータのCPU(中央処理装置)が挙げられます。マウスやキーボード、メモリなどの周辺機器からデータを受け取り、制御・演算・加工する役割を担います。
ロジックはコンピュータにおける頭脳の役割を担っているため、ロジックの処理スピードや容量などのスペックによって電子機器の性能は大きく影響を受けます。
センサ
センサとは、音、湿度、温度、光、電気、速度、圧力などの物理的・化学的な現象を電気信号やデータに変換して出力する装置のことです。
IoT家電という言葉をよく耳にすると思いますが、IoT家電にはほぼすべてセンサが使われていると思ってよいでしょう。エアコンについている温度・湿度の計測機能や、スマホのGPSによる移動速度表示などもセンサが使われています。
トランジスタ
トランジスタは電流の流れをコントロールする電子部品です。スイッチとしての機能として回路のオンオフを切り替える機能を持っています。
また小さな電気信号を何倍にも大きくして伝える増幅機能も持っています。
ダイオード
ダイオードには電気の流れを整える役割があります。ダイオードを用いることでもともと交流している電流の流れを一方通行にすることができます。
また、ラジオなどの電波から音声信号を取り出す「検波」の役割も持っています。
これまで半導体が不足していた背景
2020年後半から半導体不足が問題として取り上げられるようになりました。半導体が不足していた背景としては、大きく分けて以下の2つの原因が挙げられます。
- 需要の拡大
- 供給量の減少
ここでは、半導体が不足した背景について詳しく紹介します。
- 需要の拡大
- 新型コロナウイルスによる需要の拡大
- 技術進歩による需要の拡大
- 供給量の減少
- パンデミックによる生産の停止
- 対中制裁
- 車載用半導体の不足
需要の拡大
半導体への需要が高まった背景について解説します。
- 新型コロナウイルスによる需要の拡大
- 技術進歩による需要の拡大
新型コロナウイルスによる需要の拡大
2020年始めに感染が拡大し始めた新型コロナウイルスの影響により、企業でのテレワークの導入や学校でのオンライン授業が普及しました。
これにより半導体が使用されているPCやスマホの需要が高まりました。
さらに、PCやスマホだけではなく、ゲーム機やタブレットなど「おうち時間」を充実させるための商品への需要も高まったことから、新型コロナウイルスにより半導体を使用した電気機器の需要が拡大したといえます。
技術進歩による需要の拡大
IT技術が進歩していることも半導体の需要拡大に関係しています。5G通信の登場やAI技術の進歩、センサを搭載したスマート家電などが普及したことから、半導体市場全体への需要が高まりました。
供給量の減少
半導体への需要の拡大と同時期に、供給量の減少につながる状況も重なりました。
ここでは供給量が減少した理由について説明します。
- パンデミックによる生産の停止
- 対中制裁
- 車載用半導体の不足
パンデミックによる生産の停止
新型コロナウイルスによるパンデミックにより、世界各国でロックダウンなどの措置が行われたため、半導体生産工場で働く従業員が出勤できなくなりました。工場を稼働させることができないため半導体を生産することができず、供給量が減少する原因となりました。
対中制裁
2020年後半から世界的な半導体不足が知られるようになりましたが、その発端として2019年頃から続く米中の貿易摩擦が原因の一つとなっています。
貿易摩擦への措置として米国は中国の対象企業からの輸入を規制しましたが、その中に中国の半導体大手会社も含まれていました。これは中国がアメリカなどから半導体の技術やサプライチェーンの手法を自国の産業に活かすことを防ぐためです。
米国は半導体の供給不足を補うため台湾からの輸入に切り替えましたが生産が追い付かなかったため、半導体が減少する一因となりました。
車載用半導体の不足
こちらは半導体の需要の高まりの方でも紹介したとおり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でスマホやPCなどの電気機器の需要が高まったことが背景にあります。
これらの需要の高まりから、半導体メーカーがスマホやPC用の半導体生産を中心に行ったことで、反対に車載用の半導体の供給が不足しました。
現在、半導体在庫が超過している理由
ここまで、過去に半導体が不足していた理由について紹介してきました。しかし、2023年現在では半導体の在庫が超過していると言われています。
これまでの需要過多の状況に対応するため、各半導体メーカーは在庫の積み上げを行ってきました。
しかし、世界経済の低迷などの影響から、パンデミック初期の2020年~2021年頃に需要が拡大した個人向けのPCやスマホの需要は現在は停滞しており、需要の拡大に合わせてPC・スマホ用の半導体の生産に注力していたことも重なって、半導体の在庫が超過しています。
半導体の在庫における今後の見通し
半導体の在庫はどうなる見通しなのでしょうか?今後の予測について紹介します。
- 半導体需要は二極化の見通し
- 国際状況が大きく影響する可能性
半導体需要は二極化の見通し
半導体の在庫は2021〜2022年は全体的に不足していましたが、各メーカーの増産で底は抜けました。
半導体への需要に関しては、パンデミックの影響で、需要があったメモリー半導体は需要が減速しています。一方で、電気自動車(EV)をはじめとする車載向け半導体やデータセンター向けに利用されるパワー半導体は需要が継続しています。
このように半導体の市場は二極化する見通しですが、人工知能(AI)、ビッグデータ、メタバースなどの新技術の開発による需要の高まりから、中長期的には半導体市場全体の需要は伸びると予測されます。
参考:JETRO(ジェトロ)
国際状況が大きく影響する可能性
半導体の在庫の今後については、国際状況を注視しておく必要があります。中国は自国の経済失速による国内需要の低迷により半導体の輸入量を減らしており、2022年10月以降の米国による半導体の対中輸出管理規制の強化に伴い自国での半導体サプライチェーン構築にも力を入れてきました。
これにより、各国の対中向けの半導体在庫が行き場を失う可能性もあり、中国との取引に関わる半導体のサプライチェーンの再編を模索する動きも徐々に進展することが見込まれます。
また、中国に限らず世界各国で半導体の自国生産の動きが高まっています。
アメリカは半導体の生産がアジアに偏在していることを解消するため自国の生産シェアを高めるためのCHIPS法を制定しました。
EUも欧州半導体法を制定し、生産シェアを高める計画を立てています。
インドはこれまで半導体の生産を行なっていませんでしたが、自国で生産していくために企業20社以上を支援するといった政策を立案しています。
今後の半導体在庫がどうなっていくのか、日本だけでなく世界各国の動きを注視していく必要があります。
参考:JETRO(ジェトロ)
まとめ:半導体在庫の売買ならレスターマッチングサービスがおすすめ
半導体のサプライチェーンは各国とのつながりが強いため、自社の状況だけではなく国際状況を踏まえた需要予測、供給計画が重要になってきます。
これまで在庫不足が問題となっていた半導体ですが、過剰供給から在庫超過になっており、各メーカーは在庫調整をしていく必要があります。在庫を処分したいけれど売り先が見つからない、需要がある取引先を見つけたいと考えている企業も多いと思います。
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